法務 求人の効果
証券取引所の受託契約準則についても,「いわゆる普通契約約款の支配する取引においては当事者間に別段の特約のないかぎり当事者がたとえ約款内容を具体的に了知しなくとも当該約款によって契約したものと認められる効力を生ずるものであり,本件受託契約準則もまた同様と解すべきである」とする最高裁判決がある(最判昭37.2.6商事法務248.31)。
また,商品取引所法に基づいて定められた受託契約準則についてではあるが,「商品取引所法に基づいて定められた受託契約準則は,いわゆる普通取引約款であるから,当該取引所の商品市場における売買取引の委託については,当事者問に特別の約定のないかぎり,商品仲買人(昭和42年の同法改正後は商品取引員)のみならず,委託者をも,その意思の如何にかかわらず,また,その知,不知を問わず,拘束するものと解すべきである」とする最高裁判決もある(最判昭44.2.13民集23.2.336)。
約款一般の拘束力の根拠については,「約款による」との商慣習が存在するとする白地商‘慣習説や,自治法としての約款の法規範的性格を承認する自治法規説などがある。
いずれにしても,約款の拘束力を認める前提条件として,相手方当事者が約款の内容を知ろうと思えば容易に知ることができる状態が確保されていなければならないとする考え方が有力であるが,現在のところ,受託契約準則の適切な開示については,必ずしも十分とはいえないとされている。
東京証券取引所受託契約準則6条1項は,顧客が有価証券の売買の委託をする場合に,証券会社など,取引所の取引参加者に対して指示すべき事項として,@売買の種類,A銘柄,B売付又は買付の区別,C数量,D値段の限度,などを定めている。
売買注文にはさまざまな種類があるので,それぞれの注文の内容を理解したうえで,これらの事項を具体的に指示することが重122第3章株式・社債など要である。
あいまいな指示は,後日,証券会社との間でトラブルが発生する原因となりうる。
これらの指示事項のなかで特に重要な意味をもっているのが値段である。
証券取引所における売買立会による売買は,競争売買によって行われている(東証業務規程10条1項)。
競争売買では,価格優先の原則が適用され,売付の注文では,低い値段の売付のほうが高い値段の売付よりも優先され,買付の注文では,高い値段の買付のほうが低い値段の買付よりも優先される。
また,値段が同じ場合は時間優先の原則が適用され,先に出された注文のほうが後に出された注文よりも優先される(東証業務規程10条2項1号・2号)。
このように競争売買では,値段が売買が成立するかどうかに大きな影響を与える。
この値段の指定の仕方により,さまざまな注文の仕方がある。
(a)指値注文指値(さしね)注文は,A社の株を1000株,800円で買う(または売る)というように,顧客が特定の値段を具体的に指示する注文である。
ただし,証券会社が必ずその値段で売買しなければならないというわけではなく,指値より低い値段で買うことまたは高い値段で売ることは認められている。
指値注文では値段が決まっているため,顧客の希望どおりの売買が行われ,その点では安心であるが,他方,わずかの値段の違いで,売買のチャンスを逃す可能性もある。
(b)逆指値注文相場が一定の指値よりも上昇したら買付をする,または,相場が一定の値段より下落したら売付をするという注文を逆指値注文という。
高くなったら買い,安くなったら売るという通常とは逆の内容の注文であるため逆指値といわれている。
相場が急に騰落した場合,あわてて注文を出しても意図した価格ではなかなか売買が成立しないことがある。
そのような場合に備えて,あらかじめこのような注文を出しておくと有利に売買を成立させることができる。
このような注文が多くなると,相場の騰落を激化させる恐れがあるため,証券取引法は,政令の定めるところに違反して逆指値注文をすることを禁止している(証取162条1項2号)。
ただし,この規定に基づく政令がないため,逆指値注文に対する規制は現在のところない状態である。
(c)成行注文顧客が値段について指示をせず,銘柄と数量,売り買いの別だけを指示する注文を成行(なりゆき)注文という。
成行注文は値段的に指値注文よりも優先される(東証業務規程10条2項3号)。
したがって,成行注文は売買が成立する可能性が非常に高くなる。
他方,顧客にとっては思いもしない値段で売買が成立するのではないかとの不安も起こりうるが,この点については次のような措置がとられている。
証券取引所では,証券の価格が急激に変動することによって投資家が不測の損害を被ったり,あるいは市場が不当に投機化することを防止するため,1日の値段の上下の変動幅を値幅制限として定めており(東証業務規程14条5項),この値段の範囲を超えて売買が成立することがないようにしている。
たとえば前日のある会社の株の終値が500円以上,1000円未満だった場合は,上下100円が制限値幅とされている。
したがって,成行注文を出した場合であっても,この値幅制限を超えた価格で売買が成立することはない。
制限値幅一杯まで株価が上昇することをストップ高(だか),制限値幅一杯まで株価が下落することをストップ安(やす)といっている。
なお,成行注文には,その日の終わりの特定値段で売買することを条件とする終値成行注文もある。
また,店頭売買有価証券については,成行注文はできない(日本証券業協会公正慣習規則1の2「店頭売買有価証券の売買その他の取引に関する規則」42条)。
証券取引所で行われる内国株券の売買取引は,売買契約の締結日から決済日までの期間の違いにより,3種類の取引に分類される(東証業務規程9条1項)。
(a)普通取引普通取引は,売買契約締結の日から起算して4日目(休業日を除外する)の日に決済する取引である(東証業務規程9条3項)。
たとえば,火曜日に売買をした場合には金曜日に決済することになる。
なお,権利落ちなどが関係する場合は5日目となる(同項)。
ここでいう決済は,証券会社が証券取引所を通じて行う決済であり,証券会社に売買を委託した顧客は,証券会社間の決済に間に合うように,売付有価証券または買付代金を証券会社に引き渡さなければならない。
普通取引を委託した顧客は,原則として,決済日の午前9時までに,売付有価証券または買付代金を証券会社に引き渡すことになっている(東証受託契約準則11条1項。
例外,同5項)。
他方,売付代金や買付有価証券を顧客が証券会社から受領できるのは,決済日の証券取引所の決済時限(通常午後3時)以降となる。
証券取引所で行われる売買取引のほとんどは普通取引である。
(b)当日決済取引当日決済取引は,売買契約締結の日に決済を行う取引で,「証」ともいわれる(東証業務規程9条2項)。
当事者の合意により,翌日(休業日に当たるときは順次繰り下げる)に決済を繰り延べることも可能である(同項)。
当日決済取引は,売付代金や買付有価証券をすぐに必要とする場合に利用される。
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